[速報]拡大審判部がビデオ会議での口頭審理は適法との結論を下しました[G1/21]

欧州特許庁の拡大審判部は本日プレスリリースで当事者の同意が無く開催されたビデオ会議による口頭審理は欧州特許条約に違反しないとの結論を下しました(G1/21事件)。

欧州特許庁のプレスリリースの日本語訳は以下の通りです。

背景

拡大審判部は、欧州特許条約(EPC)の最高司法機関である。その主な任務は、欧州特許条約の統一的な適用を確保することである。

COVID-19のパンデミックとそれに伴う渡航制限に対応するため、2020年に拡大審判部でビデオ会議による口頭審理を行うための技術的前提条件が作成された。2021年1月以降、審判部でのビデオ会議による口頭審理は、場合によっては当事者の同意を得ずに行われることもある。また、欧州特許庁の第一審部門での審査・異議申立手続きにおいても、当事者の同意なしにビデオ会議による口頭審理が行われた。

2021年3月12日に行われたT1807/15事件の仮決定において、技術審判部3.5.02はEPC第112条(1)(a)に基づき、拡大審判部に以下の質問を付託した。

「手続当事者の全員がビデオ会議形式での口頭審理の実施に同意していない場合、ビデオ会議形式での口頭審理の実施はEPC第116条(1)に規定されている口頭審理に関する権利と両立するか。」

EPC第116条(1)は次のように定めている。

「口頭手続は、欧州特許庁が適切と認める場合は、欧州特許庁の要求に基づいて、又は手続の当事者の一方の請求に基づいて行う。ただし、欧州特許庁は手続の当事者及び対象が同一である場合は,同一部課においてされる再度の口頭手続の請求を却下することができる。」

2021年3月23日、欧州特許機構の行政評議会は、新しい審判手続規則2020第15a条を承認し、2021年4月1日に発効した。審判手続規則2020第15a条は次のように定めている。

「ビデオ会議による口頭審理

(1)審判部は、EPC第116条に基づく口頭審理を行うことが適切であると判断した場合には、当事者の要請または自らの発議により、ビデオ会議による口頭審理を行うことを決定できる。

(2)口頭審理が欧州特許庁の敷地内で行われる予定の場合、当事者、代理人、同伴者は、要求に応じて、ビデオ会議による出席が許される。

(3)特定の審判の議長、及びその議長の同意を得た特定の審判の審判部の他のメンバーは、ビデオ会議による口頭審理に参加することができる。」

拡大審判部への付託の案件番号はG 1/21である。拡大審判部での審理中、EPC第24条に基づく参加異議が、そのメンバーの何人かに対して提起された。2021年5月17日の仮決定により、EPC第24条4項に従い、つまり異議を唱えられたメンバーの参加を得ずに構成された拡大審判部は議長と法的資格を有するメンバー1名を交代させることを決定した。これは、係争中の審判で少なくとも間接的に検討されていた審判手続規則2020第15a条の準備に彼らが以前関与していたからである。他の2名のメンバーに対する参加異議は却下された。2021年5月24日に提出された更なる異議は、2021年5月28日の仮決定により、認められないものとして却下された。

2021年5月28日および7月2日、新たに構成された拡大審判部で口頭審理が行われた。

2021年7月16日、拡大審判部は、事件G 1/21に関する決定の命令を下した。

主な検討事項

G1/21事件で拡大審判部は、技術審判部3.5.02によって言及されたより広い範囲の質問に対する回答の範囲を、欧州特許庁施設での直接の口頭審理に出席する当事者の可能性を損なう一般的な緊急事態の期間中に開催され、さらに審判部で特別に行われる口頭審理に限定することで、その命令を制限した。

したがって、拡大審判部はその命令の中で、一般的な緊急事態の期間がない場合、当事者の同意なしにビデオ会議による口頭審理を行うことができるかどうかという問題には触れていない。また、欧州特許庁の第一審部門における審査・異議申立手続きにおいて、当事者の同意なしにビデオ会議による口頭審理を行うことができるかどうかについても言及していない。

拡大審判部が下した命令は以下の通りである。

「当事者が欧州特許庁の施設で直接口頭審理を行うことができない一般的な緊急事態においては、審判の当事者全員がビデオ会議の形式で口頭審理を行うことに同意していなくても、ビデオ会議の形式で審判部で口頭審理を行うことは欧州特許条約に適合する。」

コメント

タイトルとURLをコピーしました