欧州特許庁では出願書面のページ数が35ページを超えると1ページ毎に15ユーロの追加費用(ページ費用)が発生します(EPC38条(2))。1ページで15ユーロというと微々たるように聞こえますが、出願書面のページ数が嵩むとこのページ費用も結構な金額になります。
今回はこのページ費用を抑える2つの手段をご紹介します。
1.PCT出願の欧州移行時に明細書の補正をしない
PCT経由の欧州特許出願の場合、ページ費用は通常国際公開のページ数を基に算出されます。例えば国際公開された日本語出願書面のページ数が35ページの場合はページ費用は発生(過去の記事「Euro-PCT出願のページ費用(Page Fee)の計算方法」を参照下さい)。
しかし移行時に明細書の補正をすると補正後の英文明細書のページ数を基にページ費用が算出されます。一般的に英文明細書のページ数は日本語明細書のページ数よりも20~30%多くなるので、移行時の明細書の補正により本来は支払う必要のなかったページ費用が発生してしまう恐れがあります。このためページ費用の観点から移行と同時の明細書の補正は避けることが好ましいです。
一方、移行後(例えばEPC規則161条の通知の際に指定された期間)に明細書を補正しても追加費用が発生することはありません(ガイドラインA-III, 13.2)。したがってどうしても調査開始前に明細書の補正が必要な場合には、EPC規則161条の通知の際に指定された期間に明細書の補正を指示することをお勧めします。
2.規則に定められた範囲で1ページの文字数を増やす
EPC規則49条で定められている最小の余白、行間及び文字サイズは以下の通りです。
余分な余白、行間および文字サイズを省くことで1ページ辺りの文字数を増やすことができページ数を圧縮することができます。ただし文字サイズはあまり小さくすること読みずらいので最低でも10pt程度に留めておくことをお勧めします。
この1ページ辺りの文字数を増やす方法は、英文出願書面でページ費用が計算されるパリルートでの欧州特許出願で主に有効な手段です。
PCT出願の場合は上述のように原則日本語の公開広報に基づいてページ費用が計算されるので出願書面の英文翻訳のページ数を圧縮してもページ費用の削減に直接的な効果はありません。ただしPCT経由の欧州特許出願の場合であっても分割出願をした場合は、英文翻訳のページ数を基にページ費用が換算されます。このためPCT経由の場合であっても分割出願が必要になる場合を考慮して出願書面の英文翻訳のページ数を圧縮することには意義があります。
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