ドイツ弁理士筆記試験 反省会

先日の記事「ドイツ弁理士筆記試験に臨みます」でもアナウンスしましたが、10月4日~7日の4日間、ドイツ弁理士筆記試験を受けてきました。今回は試験を振り返りたいと思います。

1.試験科目と時間

ドイツ弁理士筆記試験は特実、商標、意匠および従業員発明法の4つ科目試験からなり、スケジュールは以下のとおりです。

 1日目:特実 4時間
 2日目:商標 4時間
 3日目:意匠 3時間
 4日目:従業員発明法 3時間

また試験にはパリ条約、PCT、欧州共同体意匠規則のような条約に加えて民法、民事訴訟法、会社法、不正競争防止法、破産法といった一般法の問題も含まれることがあります。

2.合格基準

それぞれの科目試験の最高点は18点で点数に応じて以下の成績が割り当てられます(弁理士研修および試験に関する規則(PatAnwAPrV)46条)。

 18.00~14.00 秀(sehr gut)
 13.99~11.50 優(gut)
 11.49~6.50 良(vollbefriedigend oder befriedigend)
 6.49~4.00 可(ausreichend)
 3.99~0 不可(mangelhaft oder ungenuegend)

ドイツにおける法律の試験では「秀(sehr gut)」および「優(gut)」は伝説上の成績と言われているため実質的には「良(vollbefriedigend)」が最高の成績とのことです。

4科目のうち少なくとも2科目で「可」以上を取り、4科目の平均点数が3.5以上であれば筆記試験が合格となり(PatAnwAPrV49条)、最終試験である口頭試験への参加が許されます。一方で不合格の場合は1回は筆記試験の再受験が許されます(PatAnwAPrV54条)。ところが2回目の再受験は例外的にしか許可されません(PatAnwAPrV55条)。

また欧州特許弁理士試験のような科目合格はありません(過去の記事「欧州弁理士試験 反省会」をご参照下さい)。

3.感想

体力、精神力が求められる試験でした。年齢的なこともあるかもしれませんが欧州特許弁理士試験以上に疲れました。欧州特許弁理士試験は3日間しかなかったため最初の2日を勢いで乗り切れば「後1日がんばれば終わる」という気持ちで試験に臨めますが、ドイツ弁理士筆記試験は4日間に亘るため2日目が終わってもまだ2日も試験が残っているため気持ちが楽になりません。また欧州特許弁理士試験のように科目合格がないため科目ごとの気持ちの切替が難しいです。どうしても前日の科目試験の出来が次の日の科目試験に精神的に影響を及ぼします。

また答案に書くべき文字数も欧州特許弁理士試験よりも多かったと思います。欧州特許弁理士試験ではどちらかというと問題の分析成に時間を要しますが、ドイツ弁理士筆記試験では問題文が短いため、問題の分析に要する時間が少なく、その分書く時間の比率が増えます。試験初日から書く作業の疲労により右手が痙攣しました。手の疲労はたまる一方で4日目の最終日には試験開始前から既に右手が痙攣してました。

さらに持ち込みが許されている条文集が合計20キロほどになります。日々この条文集を持ち運ぶだけでも体力が奪われました(「ドイツ弁理士筆記試験に臨みます」の写真参照)。

私がこれまで体験した試験のなかで一番辛い試験だったと思います。もう二度と受験はしたありません。

4.感触

初日の特実では事前に詳しく勉強した破産法にかかる設問があったため得意になってしまい不必要にその設問に時間を費やしてしまいました。このため他の設問に費やす時間が圧迫されてしまい他の設問に対する回答が一部不十分となりました。とはいえ内容的には全体としては「可」は取れたかなと思いました。

しかしながら初日の試験では答案に答案のページ数を記した表紙を添付し忘れるというあってはならぬ形式的なミスを犯してしまいました。このミスに気が付いたときにはこの科目試験の点数が0点になることを覚悟しました。幸運にも表紙の添付忘れは成績に影響を及ぼさないとのアナウンスが試験委員から後日あり一命をとりとめましたが肝を冷やしました。

2日目の商標では何度も過去問で練習した登録商標に対する異議の問題だったため大きなミスはせず「可」は取れたかなと思います。

3日目の意匠は厄介でした。表面上は意匠法の問題の体をなしてましたが実際は権利が共有の場合に一方の権利者がその権利に基づいて得た利益に対して他方の権利者がその利益の分配請求権を有するか否かを論点とするゴリゴリの民法の問題でした。当初意匠法で処理を試みましたが二進も三進もいかず、民法の問題であることに気付いた際には既に試験開始から45分が経過してました。このため答案構成ほぼ時間を費やすことができず答案を書き始めるという状況に追い込まれてしまい、答案がかなり無秩序になってしまいました。また焦燥感のせいか多くの内容的ミスも誘発されました。このためこの試験科目では「可」を取れた自信がありません。

最終日の従業員発明法も何度も練習した過去問の傾向からの大きな剥離はなかったため「可」は取れたかなと思います。

上述のように意匠はボロボロであったものの特実、商標、従業員発明法で大きな題意把握ミスがなければ総合的には合格点には達したのではないかと思います。

5.反省点

初日の表紙の添付し忘れは試験委員会のアナウンスが不十分であったとは言えあってはならないミスでした。試験要綱をもう一度しっかりと読みこんでおくべきでした。また3日目の意匠では焦燥感により完全に平常心を失いまいした。平常心を保っていれば防ぐことが出来たミスも多かったと思います。

試験の結果は11月19日に発表されます。本音を言うと1月ぐらい休暇をとってゆっくりしたいのですが試験準備中にたまった案件の処理と11月末に予定されている口頭試験の準備とによりまだしばらくはゆっくり出来そうにありません。

上述したようにもう二度と受験したくないので合格していることを切実に望むばかりです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました