欧州特許庁における分割出願では、分割出願の出願時に、親出願において指定されているすべての締約国が分割出願においても指定されたものとみなされます(EPC76条(2))。逆にいうと、分割出願の出願時に、親出願において指定されていない締約国は、分割出願において新たに指定することはできません。
ここで気になるのが、親出願が欧州においてみなし全指定制度が導入された2009年4月1日以前に出願され、分割出願が2009年4月1日以後に出願された場合の指定国の取り扱いです(モデルケース1)。
欧州では2009年4月1日までは、指定したい締約国を選択し、指定された締約国の数に応じた指定料金を支払っていましたが、2009年4月1日からは指定料金が一律になり(2013年11月現在で555ユーロ)、全ての締約国が指定されたものとして取り扱われています。そしてこの一律指定料金(555ユーロ)は、2009年4月1日以降になされた分割出願にも適用されます。
また、みなし全指定制度の導入後において親出願と分割出願との間の期間に欧州特許条約に加盟した締約国はどのように取り扱われるのでしょうか(モデルケース2)。
以下、2つのモデルケースを参照して、上記特殊な場合における分割出願の締約国について説明します。
・モデルケース1
親出願:
出願日:2009年2月(みなし全指定制度の導入前)
指定国:ドイツ、イギリス、フランス
分割出願:
提出日:2012年11月(みなし全指定制度の導入後)
この場合、分割出願ではEPC76条(2)の原則の通りドイツ、イギリス、フランスしか指定できません。一方で、分割出願にはみなし全指定分の指定料金(555ユーロ)が要求されます(Guideline Part A Chapter IV 1.3.4)。このように指定は3カ国しかできないのにも関わらず、みなし全指定分の指定料金が要求されるという非常にアンフェアな運用となっています。
・モデルケース2
親出願:
出願日:2010年1月(みなし全指定制度の導入後)
指定国:みなし全指定
分割出願:
提出日:2013年11月
備考:2010年3月2日にアルバニアが欧州特許条約に加盟
2010年8月3日にセルビアが欧州特許条約に加盟
この場合もEPC76条(2)の原則が適用されます。このため分割出願ではアルバニアおよびセルビアを指定することができません。
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