ドイツにおける均等論の3要件

ドイツにおける侵害訴訟の場でも、文言侵害だけでなく均等論も重要な議論のテーマとなります。しかしドイツの均等論の要件は日本の均等論の要件とは若干異なるので、注意が必要です。以下にドイツにおける均等論の3つの要件について説明します。

1.同一効果性(Gleichwirkung

当該要件では、代替性手段(Austauschmittel)が、対象特許のクレームに記載された解決手段が対象特許の教唆に従って達成しようとする効果と同一の効果を達成することが求められます。
日本でいうところの「置換可能性」に対応する要件ですが、ドイツでは「相違部分(代替性手段)が特許発明の本質的部分ではないこと」という要件がない点で、日本の均等論と異なります。

2.想到容易性(Naheliegen
当該要件では、当業者が優先日の知識水準に基づいて進歩性を伴う考察をすることなく前記代替性手段を同じ機能を有する解決手段として見出すことができたことが求められます。
日本の「想到容易性」とほぼ同じ内容ですが、日本では判断時期が「侵害時」であるのに対し、ドイツでは判断時期が「優先日」である点で相違します。

3.等価値性(Gleichwertigkeit
当該要件では、当業者が、その変容された手段を有する変形実施形態を、クレームの文言に含まれる具体的な実施形態と同価値の解決手段として考慮に入れることができたことが求められます。
例えば登録特許の明細書中に代替性手段を除外する旨の記載があったり、代替性手段が登録特許の明細書中には記載されているものの、クレームには記載されていない場合は、当該要件は満たされないと判断されます。日本の「包袋禁反言」と混同されがちな要件ですが、出願手続における補正や意見書は考慮されないという点で「包袋禁反言」とは異なります。

<参考文献:Schulte>

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