先日の記事で、ドイツを含むいくつかのEPC加盟国では欧州特許の成立後のValidation(有効化)の際に国内代理人の選定が要件ではない旨を説明しました。欧州特許成立後に国内代理人を選定しなかった場合、問題が想定されるのは(1)年金納付時および(2)特許対して無効審判が請求されたときの二つの場面であると思います。
以下、ドイツにおける欧州特許の成立後に国内代理人を選定しなかった場合の年金納付時および無効審判請求時の取扱について説明します。
1.年金納付時
年金納付手続きは代理人を通す必要がないので(ドイツ特許法25条)、自ら納付しても、年金納付会社を通して納付しても問題ありません。さらにドイツ特許庁はドイツ国内代理人がいない場合であっても年金納付期限のおよそ8週間ほど前に海外の権利者に対して年金納付期限を通知するサービスを提供しています(ドイツ特許庁Newsletter 4/09)。
2.無効審判請求時
ドイツ国内代理人がいない場合は、審判請求書の写しが海外の権利者に直接送付されます(ドイツ特許法82条、127条、ドイツ民亊訴訟法183条、184条)。ただし審判請求書に対する反論等の手続きをするためにはドイツ国内代理人を選定する必要があります(ドイツ特許法25条)。
3.まとめ
このようにドイツでは国内代理人を選定せずとも年金納付のリマインドも無効審判請求書の写しもドイツ国外まで送付してくれます。このためドイツ国内代理人を選定せずとも権利者が知らないうちに権利が取り消されるといったことは発生しません。最も、ドイツ語の年金納付のリマインドや無効審判請求書の写しがいきなり送られてきても、日本の権利者は混乱するだけでしょうから、そういった混乱を減らすためにもドイツ国内代理人を選定するメリットはあると思います。
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