<欧州>早期審査以外の審査期間短縮手段 その3 EPC規則70条(2)の権利の放棄

1.EPC規則70条(2)の通知とは?
EPC規則70条(2)の通知とは、出願時または移行時に審査請求が済まされた欧州特許出願において、拡張欧州調査報告書の送付の後暫くして出願人になされる審査継続の確認をする通知です(EPC規則70条(2))。つまり欧州特許庁は、拡張欧州調査報告の送付後、「調査でこんな結果が出ましたけど、金のかかる本審査を本当にすんの?今の時点であきらめれば審査料を返しまっせ。」ということを出願人に聞いてくるわけです。これに対し出願人は、欧州調査報告に対する応答と共に審査を継続するか否かの判断を通知から6月以内にすることが求められます。

2.EPC規則70条(2)の権利の放棄の要件
1)
前提
出願時または移行時に審査請求がなされ、審査料が支払われていること(EPC規則70条(2))。

2)手続き
欧州移行時に提出するForm for entry into the European phase (EPO Form 1200)のボックス4.2にチェックを入れるだけです。庁費用はかかりません。

3.EPC規則70条(2)の権利の放棄の効果
1)欧州調査報告書に欧州特許庁の見解書が添付されなくなります。すなわち引用文献だけが列挙された一昔前のISRのような形式の欧州調査報告書が発行されます。本来であれば調査報告書に添付されるはずの欧州特許庁の見解書は、後述するファーストアクションとして発行されます。

2)欧州調査報告書の送付後、約一ヵ月後にEPC規則70条(2)の通知がなされることなくファーストオフィスアクションが送付されます。これにより欧州調査報告書の送付とEPC規則70条(2)の通知との間の時間を短縮することができます。ここで欧州調査報告の送付とEPC規則70条(2)の通知との間の時間は、PCT経由のEuro-PCT出願で約1ヶ月ほど、PCTを経由しない通常の欧州出願で約半年ほどです。

3)EPC規則70条(2)の権利を放棄してしまうと調査報告書を受け取った時点で出願を取り下げた場合であっても、審査料が返還されなくなります。

4.まとめ
EURO-PCT出願の場合はEPC規則70条(2)の権利を放棄しても短縮できる期間が1ヶ月程度と短く、あまりメリットがないためお勧めできません。一方、パリルートの欧州出願では当該権利放棄によって短縮できる期間が6ヶ月以上になることもあるため、審査を継続することが予め決定している場合は、審査期間の短縮のための有効な手段であるともいえます。

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