発明の単一性の判断の際に、発明が同一の特別な技術的特徴(STF:special technical feature)を有しているか否かを検討することは、日本と欧州で共通しています(日本特許法第37条、日本特許法施行規則25条の8;EPC82条、EPC規則44条(1))。この特別な技術的特徴とは、日本でも欧州でも同様に「先行技術に対する貢献を明示する技術的特徴」と定義されていますが(日本特許法施行規則25条の8、EPC規則44条(1))、「先行技術に対する貢献」に求められるレベルが日本と欧州と異なるので注意が必要です。
1.日本における「先行技術に対する貢献」のレベル
日本の審査基準によると、
1.「特別な技術的特徴」とされたものが先行技術の中に発見された場合
2.「特別な技術的特徴」とされたものが一の先行技術に対する周知技術、慣用技術の付加、削除、転換等であって、新たな効果を奏するものではない場合、または
3.「特別な技術的特徴」とされたものが一の先行技術に対する単なる設計変更であった場合
に「特別な技術的特徴」とされたものは、先行技術に対する貢献を明示しないとされています。
この1~3の条件は日本特許法29条の2におけるいわゆる「実質同一の範囲」と同じと考えられています。換言すると「特別な技術的特徴」が先行技術と実質同一でなければ日本では発明の単一性を満たすと判断されます。すなわち日本では「特別な技術的特徴」が先行技術に対して進歩性を有することまでは求められていません。
2.欧州における「先行技術に対する貢献」のレベル
これに対し欧州では、「特別な技術的特徴」は先行技術に対して進歩性を有してはじめて「先行技術に対する貢献を明示する」と判断されます(T0006/90,W0027/89)。したがって「特別な技術的特徴」が、先行技術と実質同一でなくとも「先行技術に対する貢献を明示」しないと判断されることがあります。
3.まとめ
このように欧州では日本よりも高い「先行技術に対する貢献」のレベルが求められるため、日本では単一性が問題にならなかった出願でも、欧州特許庁で単一性違反が指摘されるということがあり得ます。
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