欧州特許庁が補正による新規事項の追加に厳しいことをは有名です。この新規事項の追加に厳しい欧州特許庁において自由な補正を確保するために、クレーム数の増加、明細書において図を用いずに発明を概念的に説明、特徴とその組合せをマトリクス形式で開示などの様々なアプローチが提案されています。
これらのアプローチの中で最も効果的と思われるのが明細書におけるリクレームです。このリクレームは欧州ではClaim-Like Clauseとも呼ばれています。
補正用の構成要件のストックを増やすだけでしたら従属クレームを増やすという手段もあります。しかしクレーム数が15超になると欧州ではクレーム料金(2026年5月2日時点では1クレームごとに290€)が発生します。一方でClaim-Like Clauseの場合はどれだけ記載を増やしても追加費用は発生しません。
またClaim-Like Clauseで欧州実務向けの補正用の構成要件のストックさえ確保しておけば、明細書の実施形態は日本式のままでも問題ありません。
Claim-Like Clauseは日本からの出願でも良く用いられていますが、多くの場合はクレームのコピー以上のことが開示されていません。これではClaim-Like Clauseの使い方としてもったいないです。
補正用の構成要件を増やすという観点からはClaim-Like Clauseの数はクレーム数よりも遥かに多くすることが好ましいです。
例えば以下の例ようにクレームでAとBとのリストが開示されているが具体的な選択肢の組合せがクレームされていない場合、AとBとのリストから選択肢を組み合わせる補正は「Two-lists principle」により新規事項の追加に陥りるリスクが高いです(「Two-lists principle」って何?という方は過去の記事「EPOでは1のリストからの選択でも新規事項の追加になり得ます」をご参照ください)。
クレーム1
a1、a2、a3またはa4であるAと、b1、b2、b3またはb4であるBとを含む組成物。
クレーム2
さらにCを含むクレーム1に記載の組成物。
しかし以下のようなClaim-Like ClauseがあればAおよびBの選択肢の全ての組合せが開示されていることになり、AとBとのリストから自由に選択肢を組み合わせる補正が可能となります。
Claim-Like Clause
[1]a1、a2、a3またはa4であるAと、b1、b2、b3またはb4であるBとを含む組成物。
[2]Aはa1である[1]に記載の組成物。
[3]Aはa2である[1]に記載の組成物。
[4]Aはa3である[1]に記載の組成物。
[5]Aはa4である[1]に記載の組成物。
[6]Bはb1である[1]~[5]のいずれか一つに記載の組成物。
[7]Bはb2である[1]~[5]のいずれか一つに記載の組成物。
[8]Bはb3である[1]~[5]のいずれか一つに記載の組成物。
[9]Bはb4である[1]~[5]のいずれか一つに記載の組成物。
[10]さらにCを含む[1]~[9]のいずれか一つに記載の組成物。
このようにClaim-Like Clauseを活用すれば追加費用無しに、かつ明細書を大きく修正することも要さず効率的に欧州権利化用の補正用の構成要件のストックを増やせます。
