欧州ではクレームされた数値範囲が公知範囲とオーバーラップすると新規性が否定されます

以前の記事「EPOにおける数値範囲の新規性」および「EPOにおける数値範囲の新規性②」では、以下の例1のようにクレームされた数値範囲が先行技術文献に開示された数値範囲よりも狭い場合は、選択発明として新規性が認められ得ることを説明しました。

例1:
クレーム1:物質Xを3~5%含むアルミ合金。
引用例:物質Xを1~8%含むアルミ合金。

それでは以下の例2ようにクレームされた数値範囲が先行技術文献に開示された数値範囲と一部オーバーラップするような場合はどうでしょうか?

例2:
クレーム1:物質Xを5~10%含むアルミ合金。
引用例:物質Xを1~8%含むアルミ合金。

このようにクレームされた数値範囲が公知の数値範囲と一部オーバーラップする場合、欧州特許庁は公知の数値範囲の上限または下限によって新規性が否定されるとしてます(ガイドラインG-VI, 8)。つまり上記例2の場合、クレーム1の「物質Xを5~10%含むアルミ合金」の新規性は、引用例の「物質Xを1~8%含むアルミ合金」の上限「8%」によって否定されます。

このように欧州ではクレームされた数値範囲が公知の数値範囲と一部オーバーラップする場合は通常新規性が否定されます。

一方でクレームされた数値範囲が公知の数値範囲と一部オーバーラップする場合であっても例外的に新規性が認められる場合もありますが(例えばT 26/85)、これについてはまた別の記事で解説したいと思います。

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