EPOで特許登録公報公開後に分割出願をする裏技

以前の記事「分割出願の時期的要件(欧州)」で説明しましたが、特許査定後であっても欧州特許出願が欧州特許庁に係属中であれば分割出願をすることができると説明しました。より具体的には特許査定が発行された後も特許登録公報の公開日の一日前までであれば分割出願をすることができます。逆に言うと特許登録公報公開後は分割出願をすることができません。

しかし特許登録公報の公開日後であってもまだ分割出願をすることができる裏技があります。

それは特許査定に対してAppealを請求するということです。

特許登録公報は通常特許査定から3~4週間ほどで公開されます。しかしAppealは特許査定から2月以内に請求することができます(EPC108条)。このため特許登録公報公開後であっても特許査定から2月以内であればまだAppealを請求できます。

Appeal請求後はAppealの停止効力(suspensive effect)により欧州特許出願がまた欧州特許庁に係属した状態に戻されます。つまりAppeal係属中であれば欧州特許出願も欧州特許庁に係属中ということになるので分割出願をすることができます。分割出願後はAppealを取り下げても問題ありません。

従来の欧州特許庁の判例ではこのような特許査定に対するAppealはclearly inadmissibleなので停止効力は無いとしていました(例えばJ 28/03)。このため従来の判例に従えば特許査定に対するAppealを請求したとしても分割出願は認められませんでした。しかし今年になって、特許査定に対するAppealはclearly inadmissibleとは言えず、停止効力を有するとの審決が出ました(J 01/24)。実際にこの新しい審決J 01/24では、特許登録公報公開後に請求したAppeal中の分割出願が認められています。

このように新しい審決J 01/24に従えば、特許登録公報の公開日後であっても特許査定に対するAppealを請求することで分割出願が可能になります。

一方でこの新しい審決J 01/24の考えは今後の別の審決によりさらに覆される可能性もあります。したがってどうしても必要な場合を除いてこの裏技には頼らない方がよいです。

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