Q&A形式で学ぶ欧州特許庁の拡大審判部

欧州特許庁の拡大審判部による審決は日本でも注目されることが多いため、拡大審判部(Enlarged Board of Appeal)という名称をご存じの方はは日本でも多いと思います。

しかし拡大審判部が実際にどのような機能を有しているのか、どのような事件が拡大審判部で争われるのか、そして拡大審判部と通常の審判部である技術部、法律部、懲戒部とはどのような関係にあるのかまで把握されている方は少ないのではないでしょうか。

そこで本記事ではQ&A形式で拡大審判部の全容を簡単に紹介します。

Q.拡大審判部ってなに?

拡大審判部とは欧州特許庁の部課の一つであり(EPC15条(g))、審判部(BoA:Boards of Appeal)の一部門です。また審判部には拡大審判部の他に①拒絶査定不服審判及び異議決定に対する審判請求を担当する技術部(Technical Boards)、②欧州特許庁の受理部及び法律部の決定等に対する審判請求を担当する法律部(Legal Board)、③弁理士の懲戒や試験に関する事件を担当する懲戒部(Disciplinary Board)が含まれます。

審判部の構造

Q.拡大審判部の役割は?

拡大審判部の主な役割は欧州特許条約の統一的な適用を確保することです。より具体的には拡大審判部は審判部または欧州特許庁長官によってEPC112条(1)に従い付託された重要な法律上の問題を決定します(EPC22条(a)(b))。これは判断統一を目的とする日本の知的財産高等裁判所の大合議の役割と似ています。

この他にも拡大審判部は再審に関して決定する役割も有します(EPC22条(c))。

Q.審判の当事者が拡大審判部への質問の付託を請求することはできるか?

はい。EPC112条(1)(a)に従い審判の当事者が拡大審判部への質問の付託を請求することが出来ます。ただしその請求を認めるか否かは審判部の裁量に因ります。つまり拡大審判部は控訴審としての機能は有しません。

Q.どんな時に法律の問題点が拡大審判部に付託されるか?

上述のように拡大審判部の主な役割は欧州特許条約の統一的な適用を確保することです。このためある論点について審決が割れており、統一的な適用が確保されていない場合であってかつ審判部の決定がその論点に依存する場合に拡大審判部へ質問が付託がされます。

Q.拡大審判部の構成は?

法律上の問題の審理に関する場合、拡大審判部は5名の法律職構成員と2名 の技術職構成員との計7名で構成されます(EPC22条(2))。再審に関する審理の場合、拡大審判部は4名の法律職構成員と 1名 の技術職構成員との計5名で構成されます(EPC規則109条(2)(b))。

拡大審判部の構成員は欧州特許機構の行政評議会によって審判部における技術部、法律部、懲戒部の構成員から任命されます。また欧州特許条約のハーモナイゼーションを促進するために、行政評議会はEPC締約国の国内裁判官を拡大審判部の外部構成員として任命することもあります。

Q.拡大審判部の判決の効力は?

法律上の問題に関する拡大審判部の決定は、欧州特許庁および審判部を拘束します(EPC112条(3))。

Q.年間どれぐらいの事件が拡大審判部で審査されるか?

欧州特許庁の審判部の2020年のAnnual Reportによると過去3年で拡大審判部で取り扱われた法律上の問題に関する案件数は以下の通りです。

2020:0件
2019:4件
2018:1件

Q.拡大審判部ではどのような流れで審査が進む?

2021年9月に決定が発表されたG1/19を参照すると、審判部から付託された質問に対する拡大審判部の審査の流れおよび長さは以下の通りです。

Q.第三者が拡大審判部の審査に影響を与えることはできる?

法律上の問題に関する審査では拡大審判部は第三者からの意見を積極的に募集します。したがって第三者は意見書を提出することで拡大審判部の審査に影響を与えることが可能です。この第三者からの意見はラテン語でアミカス・キュリエ(amicus curiae、日本語訳は「裁判所の友」)とよばれます。

拡大審判部の法律上の問題に関する審査では各国裁判所、特許庁、弁理士会、工業団体、企業といった様々な団体からこのアミカス・キュリエが提出されます。例えば上記G1/19の事件では27もの団体からこのアミカス・キュリエが提出されました。

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