欧州では出願時の独立クレームから特徴を削除するのは極めて難しいです

以前の記事「日本の実務家がしがちな欧州での危険な補正の形態4つ」では以下のような出願時の独立クレームから特徴を削除する補正は欧州特許庁では新規事項追加を指摘されるリスクが高いと説明しました。

出願時クレーム1:A+B

補正後クレーム1:A

このような出願時の独立クレームから特徴を削除する補正は欧州特許庁ではガイドライン上以下の3つの要件(i)~(iii)を伴うessentiality testと呼ばれるハードルをクリアしなければ認められません(GL H-V, 3.1、T 0331/87)。

クレームの特徴が、
(ⅰ)必須な特徴として説明されていないこと
(ⅱ)課題解決に不可欠ではないこと、および
(ⅲ)削除に伴い他の技術的特徴を修正する必要がないこと

そしてこのessentiality testを採用した判例では独立クレームから特徴の削除が認められた例はほとんどありません。

また欧州特許庁の審査部そして異議部はこのessentiality testを採用したガイドラインに拘束されます。つまり欧州特許庁の審査または異議では独立クレームから特徴を削除する補正はほとんど認められないことになります。

さらに欧州特許庁では分割出願の内容が親出願の内容を超えるか否かの判断には、補正と同じ基準が採用されます(GL C-IX, 1.4)。したがって日本でよくなされる「親出願の原クレーム1からいくつか特徴を削除したチャレンジクレームで分割出願」が欧州特許庁では原則できません。

一方でこのessentiality testはいくつかの判例では批判されています(T 910/03、T 1852/13、T 830/16など)。したがって今後このessentiality testがガイドラインから削除されることも考えられます。

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