欧州向けの出願では無理にでも1カテゴリー1独立クレームにしたほうが良いです

欧州特許庁では以下のEPC規則43条(2)の規定により原則1つカテゴリー(物、方法、使用)について1つの独立クレームしか許可されません。

EPC規則43 クレームの形式及び内容
(2) 第82条を損なうことなく,欧州特許出願は,同一範疇(製品,方法,装置又は用途)に属する2以上の独立クレームを含むことができる,ただし出願の主題が次の項目の1に係わっている場合に限る。
(a) 相互に関連する複数の製品
(b) 製品又は装置の異なる用途
(c) 特定の問題についての代替的解決法。ただし,これらの代替的解決法を単一のクレームに包含させることが適切でない場合に限る。

この1カテゴリー・1独立クレーム違反している場合、欧州特許庁は調査報告発行前にどの独立クレームを調査対象として選択するかを問う通知を発行してきます(EPC規則62a条(1))。そして選択しなかった独立クレームについては原則分割をしなければ権利化できません(EPC規則62a条(2))。また選択しなかった独立クレームの特徴をその後の補正で追加することは通常許されません。

さらに1カテゴリーに複数の独立クレームを有する出願では、EPC規則43条(2)だけでなく単一性も指摘されるリスクも高いです(ガイドラインB-VIII, 4.5)。

このため1カテゴリー・1独立クレームに違反すると権利化の自由度が著しく制限される恐れがあります。

一方で私の経験上、1カテゴリー・1独立クレームに違反している出願でも、出願時に複数の独立クレームを上位概念化した1つの総括独立クレームを作成することが可能だった場合がほとんどです。

例えば

例①
クレーム1.AおよびBを有する装置。
クレーム2.AおよびCを有する装置。

例②
クレーム1.Aを有する装置。
クレーム2.さらにBを有するクレーム1に記載の装置。
クレーム3.さらにCを有するクレーム1に記載の装置。

としたり、

例③
クレーム1.AとBまたはCとを有する装置。

としたりすることで1カテゴリー・1独立クレームの原則に適合した出願とすることができます。

このように無理やりにでも1カテゴリー・1独立クレームとすることで、EPC規則43条(2)が指摘されるリスクを無にすることができます。

一方で上記例②または例③のようにした場合であっても新規性や単一性の指摘されるリスクは依然として残ります。しかしそれでも1カテゴリーに複数の独立クレームがある場合と比較して自由度の高い対応が可能になります。

したがって欧州での権利化を予定している出願では無理にでも1カテゴリー・1独立クレームとすることをお勧めします。

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