欧州特許庁は補正による新規事項の追加に厳しいことで有名ですが、数値範囲の補正については思いの外寛大です。
以下に例を用いて欧州特許庁で数値範囲について(1)確実に許される補正、(2)場合によっては許される補正、(3)確実に許されない補正を説明します。
例:
出願時のクレーム1:
化合物Xを5~20wt%含むことを特徴とする組成物。
明細書:
本発明の組成物は化合物Xを5~20wt%、より好ましくは10~15wt%含む。
(1)確実に許される補正:
①化合物Xを10~15wt%含むことを特徴とする組成物。
②化合物Xを10~20wt%含むことを特徴とする組成物。
③化合物Xを5~15wt%含むことを特徴とする組成物。
欧州特許庁ではクレームされた数値範囲を明細書の記載された好ましい範囲に変更する補正だけでなく、広い範囲の上限と好ましい範囲の下限とを組み合わせたり、広い範囲の下限と好ましい範囲の上限とを組み合わせる補正が許されます(T0002/81)。
(2)場合によっては許される補正
①化合物Xを5~10wt%含むことを特徴とする組成物。
②化合物Xを15~20wt%含むことを特徴とする組成物。
広い範囲の下限と好ましい範囲の下限とを組み合わせるような補正、つまり好ましい数値範囲を除くような補正は、「クレームで言及されている範囲での作業を当業者が真剣に考える(the skilled reader would seriously contemplate working in the range referred in the claim)」ことができる場合に許されます(T1170/02)。より具体的には当該クレームされた数値の範囲内に優れた効果を示す実施例がある場合などは補正が許されます。
(3)確実に許されない補正
①化合物Xを7~12wt%含むことを特徴とする組成物。
②化合物Xを9~20wt%含むことを特徴とする組成物。
当初クレームされた範囲ではあるものの出願当初書面に開示されていなかった数値を導入するような補正は許されません(T1320/13)。一方でこのような補正はドイツでは許されます(BGH X ZB 11/90 Chrom-Nickel-Legierung)。
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