ドイツの4大特許法律事務所が合同でEPOを批判しました

ドイツの四大特許法律事務所であるGruenecker、Hoffmann Eitle、MaiwaldおよびVossiusは共同で欧州特許庁を批判する公開状を発信しました。

批判の対象となったのは近年生産性向上のためにバティステリ庁官の主導の下変更された調査および審査のインセンティブシステムです。変更後のインセンティブシステムは審査官を完了した手続(調査報告または査定)の数によって評価することで調査および審査手続きを迅速化させることを目的としています。

上記4大特許法律事務所はこのインセンティブシステムが欧州特許庁における調査および審査の質を低下させていると批判しています。批判の要点は以下のa)~f)です。

a)時間内に可能な限り迅速に手続きを終了することが目的となると調査および審査の品質がどうしても犠牲になる。

b)国際比較で高額な欧州特許庁の調査・審査費用は審査官が出願の審査のために十分な時間を有していることによってのみ正当化できる。

c)不十分に審査しかされず誤った保護範囲を持った特許は、EPC加盟国内の経済競争を歪め、妨害してしまう。

d)不十分に審査しかされなかった特許の所有者は、競合他社に対して許可された全範囲内での権利行使をできないリスクに晒されてしまう。

e)欧州特許システムのユーザが、欧州特許が信頼に値しないとの印象を頂いた場合、ユーザはますます欧州特許出願を控えるであろう。これにより特許システム全体が揺るがされる恐れがある。

f)欧州特許庁の庁費用は、欧州特許庁の自己の運営費用を賄うためのものである。しかしながら企業と異なり公共業務を主要タスクとする欧州特許庁には自己の運営費用を超えて利益を確保する必要があるとは思えない。欧州特許庁の高い黒字は高すぎる手数料を示唆するものであり、さらなる生産性の上昇は適切ではない。

全文は以下のURLに公開されています。
https://www.hoffmanneitle.com/wp-content/uploads/Letter-to-EPO_signed.pdf

個人的感想:

ドイツの4大特許法律事務所が合同で欧州特許庁を批判したのはインパクトがあります。しかしながら欧州特許庁での調査および審査の迅速化は事務所にとっては依頼人にあたる出願人が欧州特許庁とのミーティング等で要請し続けてきたことによる結果です。依頼人の要請による結果を代理人である事務所が批判するのは代理人として出過ぎた行為に思えます。

実際に欧州特許庁の調査および審査の迅速化が著しくなった2016年から2017年にかけては欧州特許出願の件数は増加しています(日本からの出願も5年ぶりに増加しました)。これは出願人が欧州特許庁の手続きの迅速化を歓迎していることを示唆しても、出願人が欧州特許庁の手続の質を懸念していることは示唆していません。

そうするとこの4大特許法律事務所による公開状は依頼人である出願人の視点をあまり意識しているとは思えません。

ただ欧州特許庁の手数料が高すぎるという点には同意できます。黒字を出すぐらいだったら手数料を下げて欲しいものです。

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