Jetro主催セミナー「いまさら聞けない欧州単一特許制度」の修正事項・補足事項

本日のJetro主催のセミナー「いまさら聞けない欧州単一特許制度」にご参加いただいた皆様、ご清聴ありがとうございました。

700名以上という未だかつて経験したことがない受講者数には正直、動揺を隠せませんでしたが、無事に終わらせることができたのも皆様のご協力のお蔭です。改めましてお礼申し上げます。

さて本日の講義の内容について以下の(1)修正事項および(2)補足事項をお伝えします。

1. 修正事項

1.1. 質疑応答の際に「親出願でなされたOpt Out申請は子出願にも継承されるか?」というご質問に対して「Yes」と回答してしまいましたが、これは誤りは正しい回答は「No」になります。つまり親出願でなされたOpt Out申請は子出願には継承されません。当該ご質問の際に引用されたUPC のHPのOpt-out Scheme 4番は欧州特許出願におけるOpt Outが、登録後の欧州特許に継続する旨を明記しているだけで、親出願におけるOpt Outが、子出願に継承されることを示すものではありません。

4.When an opt-out is registered for a European patent application, will it also apply to the European patent later granted?If an opt-out has been notified and registered with respect for an application for a European patent, the opt-out continues to apply to the relevant European patent, once granted.

1.2. 質疑応答の際に「出願人が複数の場合で、第1出願人が日本、第2出願人がフランスに事業所がある場合、財産権としての特許の取り扱いではどの国の法律が適用されますでしょうか?」というご質問に対して「ドイツの国内法が適用される」と回答してしまいましたが、これは誤りで正しい回答は「フランスの国内法が適用される」になります。詳しくは過去の記事「欧州単一効特許に基づくライセンス契約または譲渡契約にはどの国の法律が適用されるか?」をご参照ください。

このご質問の例において、財産権としての特許の取り扱いでどうしてもドイツの国内法を適用させたい場合は第1出願人の日本企業が第2出願人のフランス企業から持分を譲り受け、第1出願人の日本企業が単独の出願人となる必要があります。

1.3. 質疑応答の際に単一効申請 と 同時に提出する全文翻訳には機械翻訳が可能である旨を仄めかしましたが、欧州単一効特許の翻訳に関する取決めを定める REGULATION (EU) No 1260/2012の (12)はこの全文翻訳には機械翻訳を使用してはならないことを明記しています。したがってこの全文翻訳 に機械翻訳を使用するか否かは、自己判断と自己責任でお願いいたします。

不正確な情報をお伝えしてしまい申し訳ございませんでした。

2.補足事項

2.1. Opt Outしない=欧州特許が欧州単一効特許となるわけではありません

本日頂戴したご質問の中にはOpt Outしなかった場合、欧州特許が欧州単一効特許となるという理解に基づくご質問がいくつかありました。しかしOpt Outは単にUPCから従来の欧州特許に関する管轄を除外するものであり、欧州単一効特許の成立とは関係がありません。つまりOpt Outしなかった場合は、UPCがその従来の欧州特許に関して管轄権を有するだけで、その従来の欧州特許はこれまで通り各国で維持年金を払ったり、各国での取下げが可能です。

一方で欧州単一効特許はUPC協定の発効後の単一効申請のみによって得られます。また既に各国での有効化が済まされた従来の欧州特許を事後的に欧州単一効特許に変更することはできません。

2.2.全文翻訳が求められる移行期間(6~12年)と、Opt Outが可能な移行期間(7~14年)は互いに関係ありません

これは私の説明不足に起因するのですが、本日頂戴したご質問の中には全文翻訳が求められる移行期間(6~12年)と、Opt Outが可能な移行期間(7~14年)とを混同したことに基づくご質問がいくつかありました。

しかし全文翻訳が求められる移行期間(6~12年)は欧州単一効特許の翻訳に関する取決めを定める REGULATION (EU) No 1260/2012の6条(1)で定められた期間であり、一方でOpt Outが可能な移行期間(7~14年)はUPC協定83条(3)および(5)で定められた期間で、両者は互いに関係ありません。

全文翻訳が求められる移行期間は制度開始から6年後に機械翻訳の品櫃が十分であると判断された場合、または最長で12年で終了します(REGULATION (EU) No 1260/2012第6条)。

一方でOpt Outが可能な移行期間はユーザとのヒアリング、各国裁判所で提起された欧州特許に関する訴訟の数などに基づいて延長されるか否かが判断されます(UPC協定83条(3))。

3.その他

本日のセミナー頂戴したご質問に対する回答は近日中にまとめて本ブログで公開します。もうしばらくお待ちください。

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