ソフトウエア関連発明で「処理効率の向上」が技術的効果として認められる場合

欧州特許庁におけるソフトウエア関連発明の進歩性の議論では、主文献との差異的特徴に技術的効果があるか否かが進歩性を確立する上で重要になります(過去の記事「ソフトウェア関連発明がEPOで越えなければならない2つのハードル」をご参照ください)。

このソフトウエア関連発明の進歩性の議論でよく出願人が用いる効果が「処理効率の向上(処理速度が速い)」です。

しかし「処理効率の向上」が技術的効果として認められるか否かは場合に因ります。以下「処理効率の向上」が技術的効果として認められる場合と、そうでない場合とに分けて説明します。

1.「処理効率の向上」が技術的効果として認められる場合

クレームにおいて例えば「鋼冷却プロセスの制御」などの技術的目的が特定されている場合は、この「処理速度が速い」は技術的効果として認められます(過去の記事「技術的とは?数学的方法・人工知能編」における「技術的応用」をご参照ください)。

また処理速度の向上が計算機内部の機能に関する技術的考慮(例:CPU/メモリ階層、キャッシュ挙動、パイプライン、並列実行、I/O 帯域など)に基づいて処理資源の使用を改善することによって達成されている場合も、「処理速度が速い」は技術的効果として認められます(過去の記事「技術的とは?数学的方法・人工知能編」における「技術的実装」をご参照ください)。

2.「処理効率の向上」が技術的効果として認められない場合

一方で、単にアルゴリズム改良し計算量を減らしたことによって「処理効率の向上」が達成された場合は、「処理効率の向上」が技術的効果として認められません。

3.まとめ

このように「処理効率の向上」だけでは欧州特許庁では進歩性を確立できない場合があります。

したがって欧州特許庁において「処理効率の向上」に基づいて進歩性を確立したい場合はクレームで技術的目的を特定するか、または、「処理効率の向上」が計算機内部の処理資源の使用の改善によって達成されているというストーリーを明細書に盛り込んでおくことをお勧めします。

参考資料
https://www.epo.org/en/legal/guidelines-epc/2023/g_ii_3_3.html

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