ドイツにおけるES細胞の特許適格性

少し前の話になりますが2012年11月にドイツ連邦裁判所(ドイツの最高裁)がES細胞に関する特許の有効性について判決(X ZR 58/07)をだしました。

本ケースは、
まずドイツでグリーンピースがES細胞に関する特許(DE19756864)に対して無効審判を請求し、 ドイツ連邦裁判所が欧州司法裁判所に「ヒトの胚」の定義問題等について付託した案件です。 2011年10月18日に欧州司法裁判所が付託された問題について決定(C-34/10)を出し、それに基づき
ドイツ連邦裁判所が最終判決を出しました。

欧州司法裁判所では、ES細胞に関する特許性についてかなり厳しい決定がなされましたが、今回のドイツ連邦裁判所は、当該ES細胞に関する特許の有効性を制限付で認めるものでした。
判決の概要は以下の通りです。

a)ヒトの胚から入手したES細胞に関する特許は、ドイツ特許法第2条(2)(公序良俗違反)の規定に抵触する。

b)しかし、ドイツ特許法第2条(2)(公序良俗違反)の規定は、ヒトの胚の破壊する以外の手法で入手したES細胞に関する特許を禁止するものではない。

このため当該特許は、「ヒトの胚を破壊することで得られたES細胞を使用しない」というディスクレーマーを加えることで有効性が認められました。
ここで、「ヒトの胚を破壊せずに得られたES細胞」の具体例として、ドイツ連邦裁判所は、体外受精プロセスで得られる発生過程が停止してしまった胚から得られるES細胞を挙げています。すなわちドイツ連邦裁判所の解釈によれば、「ヒトの胚」とは、ヒト成体へ成長する能力を持った組織体のことであり、発生過程が停止してしまった胚のように当該能力を失った胚は、「ヒトの胚」には該当しないとのことです。

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