島国の日本では日本で一旦水揚げされた荷物が、さらに他国へ輸出されるという状況は少ないですが、陸続きで経済活動がボーダレスの欧州では、欧州のある国で一旦水揚げされた荷物が、そのまま欧州の他国へ輸出されるという状況はよくあります。
例えば、日本の業者Xからの荷物がドイツの港で水揚げされ、暫くの間ドイツで保管された後、イタリアに運ばれ、イタリアの業者Yによって、イタリア国内においてのみ販売・使用されるという状況です。
このときドイツに水揚げされた荷物があるドイツ特許を侵害しうる製品を含む場合、荷物をドイツで水揚げおよび保管する行為は、特許侵害を構成するのでしょうか。この問題は、ドイツにおける中間業者Zの有無によって結論が変わってくるので注意が必要です。
<ドイツにおいて中間業者Zが存在しない場合>
ドイツにおいて中間業者Zが存在しない場合、すなわち販売契約が日本の業者Xおよびイタリアの業者Yとの間で直接締結され、金銭のやり取りも日本の業者Xおよびイタリアの業者Yとの間で直接なされた場合は、当該荷物は単にドイツを「通過」するものであり、侵害は構成しないと判断されます(BGH GRUR
58, 189)。
<ドイツにおいて中間業者Zが存在する場合>
ドイツにおいて中間業者Zが存在する場合、すなわち、まずイタリアの業者Yとドイツの中間業者Zとが販売契約を締結し、そしてドイツの中間業者Zと日本の業者Xとが販売契約を締結した場合は、 荷物の水揚げ等の行為は、ドイツの中間業者Zによる「輸出のための輸入」に該当し、特許侵害を構成すると判断されます(OLG Karlsruhe GRUR
82, 295)。
<注意点>
ここで注意すべきは仮にドイツの業者Zが日本の業者Xの現地法人Zであったと
しても、特許侵害を構成すると判断されるおそれが高いことです。したがって、このような状況においてドイツで特許侵害の追及を受けるリスクを削減したい場合は、販売契約の締結および金銭のやり取りを、現地法人Zを介さずに、日本の業者Xおよびイタリアの業者Yとの間で直接すべきです。
コメント