先日の記事「スイスタイプクレームが生まれそして消えた歴史的背景のまとめ」では、スイスタイプクレームは2009年から禁止されていることを説明しました。しかし当該禁止は遡及効がないため、2009年以前になされた出願および特許ではスイスタイプクレームが有効に存在してる場合が多々あります。
このためスイスタイプクレームの権利範囲を知ることは現在においても重要であると言えます。以下、ドイツにおけるスイスタイプクレームの権利範囲について説明します。
ドイツでは、「疾患Xの治療用医薬を製造するための化合物Yの使用」という表現のスイスタイプクレームは「疾患Xの治療のための化合物Yの使用」というUseクレームとほぼ同一の保護範囲を有するとされています(BGH GRUR 01,730)。
過去の記事「Useクレームの権利範囲」でも説明しましたが、「疾患Xの治療のための化合物Yの使用」というUseクレームの権利範囲は、ドイツではクレームに記載された「使用」だけでなく「明白な準備(Sinnfällige Herrichtung)」まで拡張されます。この場合「明白な準備」とは、「化合物Yを含む疾患Xの治療薬の提供」を意味します。すなわち「疾患Xの治療のための化合物Yの使用」というUseクレームの権利範囲は「化合物Yを含む疾患Xの治療薬の提供」まで権利範囲が拡張されます。
上述のように、「疾患Xの治療用医薬を製造するための化合物Yの使用」というスイスタイプクレームは「疾患Xの治療のための化合物Yの使用」とほぼ同一の保護範囲を有します。したがいまして、「疾患Xの治療用医薬を製造するための化合物Yの使用」というスイスタイプクレームの権利範囲は、クレームに記載された「使用」だけでなく「化合物Yを含む疾患Xの治療薬の提供」まで権利範囲が拡張されることになります。
コメント