[続き]ドイツ連邦特許裁判所がシオノギ製薬の特許に関し強制実施権の仮処分を下しました

昨日の記事でお知らせしたシオノギ製薬の特許に関する強制実施権の仮処分について以下に詳細に説明します。

ドイツ連邦特許裁判所の第三判事部(3. Senat)はシオノギ製薬の抗HIV薬剤関連の欧州特許EP1422218のドイツ部分ついて、メルクにRaltegravirを有効成分とする薬剤Isentress®をドイツ国内でこれまで販売してきた供給形態の範囲内で実施権を認める仮処分を下しました。

仮処分を認めた理由についてドイツ連邦特許裁判所はプレスリリースで以下のように述べています。

「当部は、専門家の鑑定の照会した上で、当該薬剤がHIV感染患者の特定のグループに医学的理由から必要であり、相当な健康上のリスクを伴うことなく他の調剤に乗り換えることができないとの見解に達した。これは特に妊婦、乳幼児、子供そして長期間HIVに対する治療を受けた患者に当てはまる。さらに当部はウィルス負荷の効果的な減少が第三者への感染リスクを低減することも考慮した。これにより強制実施権の設定に対する公的関心が存在する。当部の見解では申請人はドイツ特許法第24条(1)による強制実施権の付与の更なる条件につても疎明した。」

ちなみに1961年の設立以降、ドイツ連邦特許裁判所が強制実施権の設定を認めたのは本件を除くと1件のみです。この1件の強制実施権も後のドイツ連邦最高裁判所(Bundesgerichtshof)で取り消されています。ドイツでの強制実施権の設定が極めて例外的であることを物語っています。

参考までに本件のこれまでと今後の流れは以下の通りです:

メルク等が連邦特許裁判所に強制実施権の付与を申請(主手続、Main Proceeding)

メルクが連邦特許裁判所に仮処分による実施許諾を申請(付随的手続、Ancillary Proceeding)

連邦特許裁判所が実施許諾を認める仮処分(付随的手続)を下す→今ここ

連邦特許裁判所が強制実施権の付与申請(主手続)についての判断を下す

(多分)当事者が連邦最高裁判所に控訴

連邦最高裁判所が判決を下す

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