ドイツの実用新案が活用される場面3つ

過去の記事でも触れましましたがドイツの実用新案は日本のそれと比較して権利行使がしやすかったり、保護対象が広かったりとかなり使い勝手がよいです。今回はその実用新案がドイツでよく活用される場面3つを紹介します。

1.特許出願の審査係属中に権利行使をしたいとき

無審査で登録されるドイツの実用新案は出願すれば2ヶ月程度で登録になり、権利行使が可能になります。このため欧州特許出願またはドイツ特許出願の審査中に潜在的侵害者を発見した場合などに、審査中の特許出願からドイツ実用新案を分岐(ドイツ実用新案法5条(1))させ、権利行使をするという手法が用いられます。この手法では通常1の特許出願からイ号を含むようにデザインされた実用新案を3つも4つも分岐させ、それぞれの実用新案権に基づいて権利行使がなされます。

権利行使される側としては、複数の権利に基づいて権利行使がなされ、さらに元の特許出願はまだ係属中という戦意が削がれる状況に追い込まれます。このため権利者としては交渉を有利に進めることができます。

2.自ら新規性を喪失してしまったとき

日本と異なり欧州およびドイツでは「意に反する公知(EPC55条(1)(a))」または「特定の国際博覧会で公知(EPC55条(1)(b))」の場合にのみしか新規性喪失の例外の適用が認められません。したがって、例えば優先日前に日本で特許を受ける権利を有する者の論文発表によって公知になった発明は、欧州およびドイツでは「新規性喪失の例外」の要件を満たすことができず、欧州特許またはドイツ特許として権利化することはできません。

しかしドイツの実用新案制度では、6月のグレースピリオドが認められています(ドイツ実用新案法3条(1))。したがって上述のように論文発表によって公知になった場合であっても優先日から6月以内であれば実用新案として権利化が可能です。

3.特許が異議で取り消されそうになったとき

実用新案の分岐は欧州特許またはドイツ特許が異議に係属中にもすることができます(ドイツ実用新案法5条(1))。またドイツの実用新案制度では口頭発表やドイツ以外での公然実施が先行技術となりません(ドイツ実用新案法3条(1))。

このため例えば欧州特許が日本での公然実施を理由に異議手続で取消されそうになった場合は、ドイツの実用新案を分岐することで有効な権利を確保するこが可能です。

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