欧州特許庁における新規性は先行技術文献から当業者が直接的かつ明確(directly and unambiguously)に導き出される範囲に基づいて限定的に判断されます。この欧州特許庁における限定的な新規性の判断基準は”Photographic Novelty”と呼ばれることもあります。一方でドイツにおける新規性の判断基準はこの”Photographic Novelty”ほど限定的ではなく、当業者が先行技術文献からより多くのことを導き出せることを前提としています。つまりドイツの新規性の判断基準は欧州特許庁のそれよりも厳しいと言われています。今回はドイツの新規性の判断基準が”Photographic Novelty”とは異なることがよくわかるドイツ最高裁(BGH)の判決(事件名:Elektrische Steckverbindung、ケース番号:X ZB 15/93)を紹介します。
[…]プラグ接触要素に接続されたコネクタと、ソケット接触要素に接続された相手側コネクタと、からなる電気コネクタ。
本発明は合成樹脂製ハウジングのチェンバ内へ差込まれる電気的接触要素、例えば2重板バネ接触要素のための「かんぬき」式締付具に関する。
“Die Erfindung betrifft ein Verriegelungselement für ein in einer Kammer eines Kunststoffgehäuses steckendes,elektrisches Kontaktelement z.B. für einen Doppelflachfederkontakt.”
本願クレーム1の発明は先行技術文献に対して新規か?すなわち当業者は先行技術文献の「電気的接触要素、例えば2重板バネ接触要素」という開示から「プラグ接触要素」および「ソケット接触要素」を導き出すことができるか?
4.ドイツ最高裁の判断:
本願クレーム1の発明は先行技術文献に対して新規でない。すなわち当業者は先行技術文献の「電気的接触要素、例えば2重板バネ接触要素」という開示から「プラグ接触要素」および「ソケット接触要素」を導き出すことができる。
「「例として」の言及から導き出されることは、開示内容は、その分野において既知の(交換可能な)接触要素タイプ、すなわち主に用いられるプラグ接触要素および関連するソケット接触要素も含まれる。」
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