競合他社の出願の権利化を阻止したい場合は日本でも欧州でも情報提供が検討されます。
しかし日本での情報提供の感覚で欧州で情報提供をしてしまうと、むしろ情報提供前よりも状況を悪化させてしまうことがあります。
以下に欧州特許庁における情報提供ですべきでないこと4点を紹介します。
1.ダメ元の情報提供
これは日本での情報提供についても言えることですが、勝率が低い情報提供はいたずらに競合を刺激し、競合の出願の価値を上げるだけの行為になります。したがって勝率の低い情報提供は見送るべきです。
2.早すぎる情報提供
EESR発行前の出願に対して情報提供のご依頼をいただくことがあります。しかしEESR発行前の段階ではそもそも出願人がEESR後も審査を続行させる意思があるかどうかが定かではありません。EESRの内容を参照して出願を取り下げる可能性もあります。
しかしながらこの段階で情報提供をしてしまうと出願人の権利化へのモチベーションを上げてしまうため、情報提供がなければ権利化を断念したかもしれないにも関わらず情報提供があったばかりに権利化が続行されてしまうということが起こり得ます。
したがって情報提供は早くともEESRに対して出願人が対応した後に行うべきです。
3.大量の引用文献
日本でも欧州でも情報提供された内容を参照するか否かは審査官の裁量に因ります。しかしこの裁量のハードルが日本と欧州とでは異なると思ってます。私の個人的な経験では日本の審査官は大量の文献を情報提供として提出しても見てくれますが、欧州の審査官は文献量が多いとやる気を無くしてしまうのか内容を参照してもらえないことが多いです。
このため情報提供で提出する文献は極めてクリティカルなものに絞り審査官の負担を減らすことを心掛けるべきです。
4.情報提供前に審査官にコンタクトをとる
日本では情報提供前に審査官に電話をかけて「これから本出願について情報提供したいので審査の中断をお願いできますか?」とお伺いとたてることがあります。そして日本の審査官は表向きには出願人以外からのそのようなお伺いは原則対応できないと言いつつも実際は忖度して審査を中断してくれることが多い気がします。
ところが欧州特許庁の審査官はこのような忖度は一切してくれません。むしろ欧州特許庁の審査官は面倒な情報提供など触れたくないので、このような問い合わせをすると逆に早期に特許査定がされてしまうということがあります。
したがって情報提供を検討している際は事前に審査官に問い合わせることはしない方が良いです。
まとめ
「3.大量の引用文献」および「4.情報提供前に審査官にコンタクトを取る」からも推測できるように欧州特許庁の審査官は日本の審査官と比較して情報提供には触れたくないという心理が強いです。
このため欧州特許庁で情報提供をする際は提供する情報を全て読んでもらって当たり前とは思わず、どうしたら乗り気でない審査官に情報提供を内容を読んでもらいそして参照してもらえるかを検討し、審査官の負担を最小限にした情報提供をするように心がけるべきです。
コメント