欧州特許が得られた後に権利をどのEPC加盟国で有効化すべきかは悩ましい問題です(「有効化ってなに?」という方は過去の記事「欧州特許の有効化手続とその後の維持年金納付手続」をご参照ください)。
一般的な考えでは競合他社の製造開発拠点や、特許権が保護しようとする主な市場となる国において有効化すべきとされていますが、多くの権利者にとっては競合他社の製造開発拠点が欧州になくかつ特許権が保護しようとする主な市場となるEPC加盟国もよくわからないというのが実情ではないでしょうか。そうすると気になるのが相場として欧州特許が実際にどれぐらいのEPC加盟国で有効化されているかということだと思います。
以下は2015年5月8日の欧州特許庁による「Comparison of fees and external costs between a European Patent and a Unitary Patent」という資料に開示された数値に基づいて作成された欧州特許がどれぐらいのEPC加盟国で有効化されるかを示したグラフです。
上記グラフからもわかるようにドイツ、イギリスおよびフランス(DE,FR, GB)の3カ国で有効化される欧州特許の比率が39%と最も多いです。
さらにドイツ単独(DE)、ドイツおよびフランス(DE, FR)、ドイツ、イギリスおよびフランス(DE, FR, GB)そしてドイツ、イギリス、フランスおよびオランダ(DE, FR, GB, NL)で有効化された欧州特許が全体の約8割を占めています。このことから欧州特許が5カ国以上の国で有効化されるのはどちらかというと稀ということが分かります。
このためどの国で有効化すべきかよくわからないということであれば取りあえずドイツ、イギリスおよびフランスで有効化しておくのが無難です。
一方で4カ国以上で権利が欲しいということであれば現在であれば単一効特許がコストパフォーマンスの観点からお得です。過去の記事「欧州単一特許制度についてよくあるQ&A」もご参照ください。