日本弁理士とドイツ弁理士との相違点

ドイツ弁理士は特許だけでなく意匠、商標の業務が可能であったり特許の有効性に対する訴え(無効訴訟)の訴訟代理権を有していたりなどど、日本の弁理士と共通点が多いです。

しかし勤務形態や実質的な仕事の内容においては日本弁理士と異なる点も多いです。以下にドイツ弁理士と日本弁理士との相違点をまとめてみました。

1.バックグラウンド

日本の弁理士試験には特に受験資格がなく万人に開かれています。

一方でドイツでは受験資格が厳しく、ドイツ弁理士試験は理工系の修士以上にしか開かれていません(過去の記事「ドイツ弁理士試験の受験資格」をご参照下さい)。このためドイツには文系のみのバックグラウンドを持つ弁理士はおらず、ドイツ弁理士の全員が理工系の修士号または博士号の保持者になります。

2.キャリアの開始時期

日本では大学卒業後、一旦弁理士以外の職業を経験した後に弁理士を目指すというルートが一般的だと思います。このため新卒でいきなり知財業界でキャリアを開始したという方は日本ではどちらかというと稀だと思います。

一方でドイツでは大学卒業後直ぐに弁理士を目指すのが一般的なルートです。私の周りですと8割から9割のドイツ弁理士が大学卒業後直ぐに特許事務所でキャリアを開始した背景を持ってます。

3.所属組織

日本では弁理士うち2割程度が企業に所属していると言われています。

一方でドイツでは弁理士という称号は代理人のみに与えらるので企業に所属する会社員は弁理士を名乗ることができません。このため企業に所属するドイツ弁理士は居ません(欧州特許弁理士は企業に所属することが許されています)。しかしながら企業に所属している会社員でもドイツ弁理士試験を受けることができます。ドイツ弁理士試験に合格した企業の従業員は弁理士「Patentanwalt」ではなく特許査定人「Patentassessor」と呼ばれます。

4.雇用形態

日本の弁理士の多くは事務所または企業に雇用された従業員であると思います。

一方でドイツでは事務所に雇用されている弁理士は稀で、ドイツ弁理士のほとんどが事業主です。つまりドイツの特許事務所に所属している弁理士は大部分が経営者であるパートナー弁理士か、フリーランスの弁理士かに分けられます。

5.仕事内容

最近は日本でも弁理士の仕事が多様化してきたとはいえ、日本弁理士のメインの仕事は今でも明細書作成であると思います。これは日本では国内出願人による出願比率が高いことに起因します。

一方で外国出願人の出願比率が高いドイツでは明細書作成はそれほどシェアを占める仕事ではありません。それよりも外内案件のOA対応の比率が高くなります。またドイツでは特許訴訟の件数も多いので、必然的に異議、無効訴訟そして侵害訴訟といった係争系の仕事も多くなります(過去の記事「 データでみる日・欧・独弁理士の仕事量」をご参照下さい)。

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