以前の記事「ソフトウェア関連発明がEPOで越えなければならない2つのハードル」でソフトウェア関連発明の「どんな特徴が技術的と判断されるかについてはまた別の機会に解説したいと思います」とアナウンスした通り技術的特徴ついて解説します。
今回はソフトウェア関連発明のうち数学的方法または人工知能の分野に絞って、どんな特徴が欧州特許庁では技術的と判断され、進歩性の判断の際に考慮されるについて解説します。
数学的方法または人工知能に関する特徴が技術的と判断されるには、その特徴が①技術的応用(Technical Application)または②技術的実装(Technical implementations)であることが求められます。
以下に①技術的応用および②技術的実装の具体例を紹介します。
① 技術的応用
数学的方法または人工知能が技術的応用として技術性が認められるには、数学的方法または人工知能が技術的な目的(technical purpose)を有することをが求められます。技術的目的には例えば以下のようなものがあります。
・特定の技術システムやプロセス(例えばX線照射装置、鋼冷却プロセス)の制御。
・ロボットアームの制御。
・測定値に基づく所望の材料密度を達成するために必要な圧縮機のパス数の決定。
・デジタルオーディオ、画像またはビデオからのノイズ除去、デジタル画像内の人物の検出、送信されたデジタルオーディオ信号の品質の推定。
・低レベルの特徴(画像のエッジやピクセル属性など)に基づくデジタル画像、ビデオ、オーディオ、音声信号の分類。
・音声信号のソースの分離、音声認識。
・信頼性の高い及び/又は効率的な伝送又は保存のためのデータのエンコーディング(及びそれに対応するデコーディング)、例えば、ノイズの多いチャネル上で伝送するためのデータの誤り訂正符号化、オーディオ、画像、ビデオ又はセンサデータの圧縮。
・電子通信の暗号化/復号化または署名、RSA暗号システムでの鍵の生成。
・コンピュータネットワークにおける負荷分散の最適化。
・DNAサンプルの分析に基づく遺伝子型の推定値の提供、信頼性を定量化することを目的としたその推定値の信頼区間の提供。
・生理学的測定値を処理するシステムによる医学的診断方法。
・耳の温度検出器から得られたデータに基づく被験者の体温の導出。
・心拍音をモニタすることによる不整脈の識別。
・技術的に適切に定義されたクラスの技術項目又は特定の技術プロセスの挙動の技術的条件の下でシミュレー ション。
一方で以下の目的は技術的とはみなされません。
・単なるシステムの制御(技術的目的が不特定)。
・請求書作成のための記録の分類(技術的目的ではなくビジネス的目的)。
・内容のみに基づくテキストの分類(技術的目的ではなく言語学的目的)。
・「通信ネットワークデータ記録」といった抽象的なデータ記録の分類(技術的目的が不特定)。
② 技術的実装
数学的方法または人工知能がコンピュータの内部機能の技術的考察によって動機付けられている特的の実装に関するものである場合は技術的目的の有無にかかわらず技術性が認められます。
技術的実装として技術性が認めらる例は以下の通りです。
・処理速度の向上。
・基礎となるハードウェアを利用するために特別に適応された数学的方法。
・コンピュータハードウェアのワードサイズにマッチしたワードサイズシフトを利用するための多項式削減アルゴリズムの適応。
・CPUでの準備処理ステップと、GPUでのデータ集約的なトレーニングステップとの実行。
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